研究のため体臭についての資料は食わず嫌いせずに何でも片っ端から読んでいます。
(専門性の高い横文字の並ぶ論文を除いて)
最近、面白い本と出合いました!
綺麗になる古典美人道 大塚ひかり 著
源氏物語を中心にこの時代の女性にスポットを当てた本。
現代の女性が気になる内容が盛りだくさん。
例えば、
◇モテ色、ブス色
◇愛のまじない
◇美人肌
◇視線と気品 など
辛口で目を引くタイトルがチラホラ。
とにかく、目の付け所が斬新!古典と聞いて堅苦しい印象を受けますが、内容は深夜のバラエティー番組のようで、とてもカジュアルでした。
文章のいたるところにユーモアな言葉を使われており、本を読みながらニヤニヤ笑いが出てしまいます。
なので、公共の場で読むのは危険かもしれません(笑)
では、今回はこの本の中で気になった「香る体」についてご紹介します。
「源氏」最大のブス妻
ニオイで人の印象を決めると言いますが、まさに源氏物語にもそのような話があります。
末摘花(すえつむはな)という高貴な身分の姫君がいました。
しかし、父の死後は没落し、泥棒も避けて通るほどの極貧になってしまいます。
センスがなく歌も読めない、おまけに半端ないブス。しかし、何を間違ったか光源氏は彼女を口説きにかかりました。
彼が彼女のそばに近づいた瞬間、魅力的な「えひの香」衣服にたきしめる香りでした。
その晩、彼女と寝てしまう。
気高く魅力的な香りが本来の末摘花の正体を完全に隠してしまったそうです。
のちに、明るみで末摘花をみた光源氏は【象のように垂れた鼻腫れた額】と【骨張って痩せたその体】にくぎ付けになってしまうが、そのときも上着に「かうばしき」香りがしっかりとたきしめてあった。
そして、末摘花から光源氏に送った歌の書かれた厚ぼったい紙にも「匂ひばかりは」深くたきしめていたらしい。
末摘花がもしも「貧乏+ブス+歌がうまい」というキャラクターであったのなら、光源氏は果たして彼女と寝ただろうか。「貧乏+ブス+極上の香り」だからこそ、彼は彼女とセックスに及び、果ては妻のひとりにしたのではないか。(引用:綺麗になる古典美人道 大塚ひかり 著)
末摘花は極上の香りで光源氏のこころを射止めました。その極上の香りがすごいのか、もしくは光源氏の鼻がバカなのか・・・。真相が気になる。
そういえば、外出した時のこと。たまに太った強面のおじさんからフローラルの香りがすると、あれ?と拍子抜けしてしまうときがあります。
さすがに、恋には落ちませんが香りで印象が変わることってありますよね。末摘花もこの手を使っていたのか。
末摘花を深堀しようとネット検索しました。
検索に末摘花を入力すると、次候補に「顔」と出てきました。(笑)
みんなの興味は末摘花の香りよりも「顔」だなんて。末摘花・・・ドンマイ。
実は私も末摘花だと思われる女性が描かれた絵巻なんかが残っていたりしてなんて、野次馬根性が出てしまいました。
みんな考えることは同じなんだな。
究極!骨から香る処方
当時の医学書「医心方(いしんほう)」をみると貴族にとって香りが重要な関心事だったかがわかります。
医心方、第26巻に「体臭を芳しくする処方」があります。
瓜弁(冬瓜の種)、当帰(セリ科多年草トウキの根)、細辛、こうほん(セリ科多年草カサモチの根茎)、きゅうきゅう(セリ科多年草オンナカズラの根茎)を各三分。桂を五分。以上6種類を別々につき調合して、方寸さじ1杯分を1日3回服用すると…。
5 日 →口が香り
10日 →舌が香り
20日 →皮膚が香り
30日 →骨まで香り
50日 →体内の気が香り
60日 →遠く四方まで香る
他に、
丁子香(ちょうじこう)や当帰、麝香など10種類を材料にして作った丸薬を規定量、口に含むと
当 日 →口が香るのに自分で気づき
5 日 →体が香るのがわかり
10日 →衣服が香り
20日 →風に向かって歩くと、風下の人に香りが嗅ぎ分けられ
25日 →洗った手や顔から地面に落ちたしずくが香り
1か月 →抱いた子供まで香る
などの処方があるそうです。
本当にこんな効果が出るのか疑わしい(笑)。そして、非常に興味深い。
漢方で調べてみましたがそのような処方は無いようでした。残念。
試したいけど、今は薬事法や健康面からこれらの処方はできないのかもしれませんね。
まとめ
現代では香水を使って香りを移しますが、体の芯から香りを出そうとしていたとは・・・。必死感が半端ない。
それだけ、当時の貴族にとっては香りが重要だったのでしょうね。
現代にも体からバラの香りがするサプリメントが販売されていますが骨まで香るほどの効果はないと思います。
もし、現代にそのような薬があればぜひ処方してワキガ臭を少しでもフローラルな香りに変えたい。
参考文献:綺麗になる古典美人道 大塚ひかり 著